祝!全資材カンスト ~艦これ~

 パラオ泊地。
 常夏の楽園は夜になってもそれほど気温が下がることはない。
 それでも海沿いは時折涼しい風が吹くこともある。
 船渠の傍に立ち並ぶ備蓄倉庫も、昼間太陽に照らされた熱が風によって抜けていく。

 欧州遠征から帰投し、最終的な消耗品の集計が終わったとき、
 この燃料倉庫の備蓄はおおよそ1/3まで減っていた。
 それが今、
 備蓄倉庫の空きスペースを埋める最後のドラム缶が運び込まれたのだ。
 
「提督、燃料がカンストしました。」

 海上護衛艦隊の旗艦を務めたのは軽巡夕張。
 随伴として睦月型駆逐艦の睦月、如月、そして海防艦の大東が整列している。
 
「ご苦労様。
 これで連日の出撃は終了となります。
 今後は週末に出てもらうことになると思うので、鋭気を養うように。」

 答礼し、一同をねぎらう。
 この娘たちは資材回復作戦が開始されてから、延べ50日間で燃料を回復させたのだ。
 新記録である。

「久しぶりに工廠にこもれますね。」

 明石と夕張はセットで工廠にいることが多い。
 大発に機銃を増設しようとしたり、噴進砲をつけようとしていたこともあった。
 噴進砲はさすがに止めたけど。

 大淀が監視しているから大丈夫・・・とは思う。

「睦月と如月は続けての出撃になるけど、もう少しだから。」

「まかせてにゃしぃ」

「万全よぉ~」 

 月末には甘味でもご馳走しようかな。 
 大発を搭載できるように改造された駆逐艦は、資材の輸送効率があがるため、
 どうしてもオーバーワークになってしまうから。

 艦娘寮に帰っていく4人を見送ると、5棟並んだ倉庫の一番奥に足を向ける。
 他と比べて小さめな倉庫だが、入渠ドックや工廠と隣接していた。
 緊急修復剤や開発資材などが詰め込んである。

 緊急修復材については当初の見積もりどおり回復はゆっくりしたものだった。
 使用優先度が最も高いのにも関わらず、入手難易度がかなり限られている。
 軍令部から時たま送られてくることもあるが、1日10個にもならないのが普通だ。

「こればかりはね。
 欧州遠征で20%を消耗し、回復見積が約100日か。」

 当初見積もりに対し、約2倍の速度で集めた結果、ようやくバケツもカンストが見えてきている。

 それだけの資材を消耗して目標を達成できていないのだから、投入資材は完全に無駄になった。
 少なくとも艦娘達の経験にはなったけれど。
 あとは大本営からの出撃命令をうまくいなして、バケツの消耗を抑えないと・・・。

 倉庫の扉を閉め、施錠したところで近づいてくる足音が聞こえ、すぐに大淀だと気づいた。

「提督、指令室へお戻りください。
 大本営から入電です。」

「了解、一緒にいきましょう。」

 うわー嫌なタイミング。
 攻勢準備じゃないでしょうね・・・。

「提督、
 顔に出てますよ。」

「こんな周囲が暗い時間じゃないと、あたしは本音を顔に出せないのよ。」 

「大丈夫です指令。
 指令室ではずいぶんと表情豊かでいらっしゃいますよ。」

 あたしは口を紡いだ。
 おまけに大本営からの入電内容は嫌な予感が的中。


 連合艦隊ハ12月中旬ヲモッテ作戦ヲ開始セリ
 準備怠リナキヨウ


 一か月も前から連絡があるなんて珍しい。
 大規模攻勢だろうか。

「大淀は何か聞いていて?」

「はい。
 いいえ提督、情報は一切出ていません。」

 直近の哨戒結果を照らし合わせてみた。
 先月から水偵を搭載できる水上機母艦や軽空母を含む艦隊を各方面に展開している。

「中部海域は比較的平穏、
 サーモン海はいつもどおり比較的地獄、
 カレー洋もまあまあ平穏、
 北方はいつもどおり地獄、 
 近海と南西諸島は平穏か。」

 上を向くのは考える時のあたしの癖だ。 
 天井備え付けのサーキュレータがくるくる回っているだけだけれど。

 大本営はハワイを抜けたいだろうから、陽動でフィジーサモア方面の確保かな。
 北方経由は大部隊の展開ができないし。

「しばらくは新艦娘の錬度向上くらいしか無理ですね。」

「大淀、資材は安全圏にあるから、節約生活は若干緩めていきましょうか。」

「はい提督。
 りょうかいしました。」

 大型建造だけはやめておこう・・・。

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