艦これ春イベント2018が開始

 パラオ諸島ペリリュー島

 南国特有の強い日差しが照り付け、日中には気温が40度にもなることがある。
 一見すると南国の楽園に見えるこの島も、深海棲艦との戦いが本格化したここ5年の間に拡張されてきた。
 大型船も停泊可能な天然の泊地を持つこの島。
 港湾施設は拡張され、ジャングルを切り開いて設営された滑走路を2本持つ。
 着任時、風通しのよい小さな木造のロッジだった司令施設は若干色褪せつつも健在であるが、周囲に建つ艦娘寮は、現在は4棟にまで増えている。
 艦娘が増え、武装、艦載機、基地航空隊が増強されるにつれ、基地を維持する要員は大増員されてきた。

 気楽に過ごせる場所も減ってきたな。
 そこまで回顧録につづったところで、近づいてくる人影が目に入った。
 秘書艦でケッコンカッコカリもしている軽巡の大淀だ。
 この暑い中、服装を崩すことなくきっちりと着こなしている。

「提督、リゾート気分で堂々とさぼらないでください。どこから持ち出したんですか・・・。」

バインダーをその薄い胸に抱きながら、私は困っているんですよといった表情を浮かべている。
 
 巨大なパラソルが作る日陰の下、ビーチチェアに寝転がり、サイドテーブルにはフルーツが添えられたトロピカルジュースが鎮座している。
 トロピカルジュースがまずかったのだろうか、それとも5月なのに水着を着ているのが悪かったのかしら。

「全部ですよ全部。」

小さくため息をつく。

「あら、あたし自分の考えを口に出していたかしら。」

長い付き合いですからね、と流されてしまった。

「提督、司令部より緊急電です。」

緊急電という割に慌てていない大淀に疑問を感じつつ、電報に目を通す。

「どれどれ、と。」

ビーチチェアから身を起こしたあたしは、ぼーとして血液不足の脳みそを活性化させる。

 ふむふむ、主計局の食糧庫が深海棲艦に襲撃されたと。
 日本時間5月15日フタサンサンマル。
 えーと、その際、備蓄していた糧秣が大量に持ち出された?深海棲艦てごはん食べるの?
 各鎮守府及び泊地は捜索艦隊を編成、これを補足し糧秣を奪還せよ・・・。

「なにこれ?」

大淀も同じ感想だったのか、その瞳にも戸惑いの感情が見え隠れしている。

「続きが問題です。」

促されるまま、続きを読み始める。

 なお、奪われた糧秣は各鎮守府及び泊地への定期補給用に輸送準備がされていたものであり、糧秣輸送の再開日は今のところ未定。

「大淀っ!?食料の備蓄状況はっ!?」

燃料、弾薬、鋼材、ボーキサイトは倉庫を埋め尽くすほどに備蓄されている。
しかし、食料ばかりは長期保存に適さないものが多く、内地からの輸送に頼らざるを得ない。
もちろん島内にも芋畑はあるが、とても賄いきれるものではなかった。

お魚さんはトロピカルに青いし・・・どうも食欲が・・・。

「概ね1週間・・・切り詰めて2週間というところでしょうか。」

この泊地にあるネジの1本まで把握していると恐れられている大淀がいうのだから、かなり正しいはず。

「くっ、生鮮品が入手できないとなると痛いわね。」

爪を噛みたくなる。

「はい。いいえ、提督。糧秣のリストですが、米、海苔、梅干し、緑茶となっています。」

言葉がすぐには飲み込めない。

「・・・・・・は?」

気の抜けた声をあげるので精いっぱいだった。

「奪われたのは、米、海苔、梅干し、緑茶です。」

大淀が改めて教えてくれる。

「深海棲艦はお茶漬けでもしようというの?ばからしい。
 そんなものの回収に貴重な燃料を消費しろと?
 度重なる大規模作戦の連続で、大本営の参謀達は脳みそが茹で上がっているんじゃないの。」

この頭痛はキンキンに冷えたトロピカルジュースのせいではないと思う。
あたしの愚痴を遮り、大淀が口を開く。周囲を警戒し、あたしの耳のそばで。

「お米がなくなるのはまずいですよ。特に赤城さんが。」

「ああああああああああああああ」

あたしはあまりの情けなさに両手で顔を隠した。
うちの大飯食らい+ごはん大好きっ娘を忘れていた。
ちなみにおにぎりにすると、海外艦も含めてみんな好きということもあり、やはりお米はまずい。

あたしの桃色の脳みそが目まぐるしく回転を始める。
捜索範囲は?艦隊規模は?捜索艦隊を補足されないように陽動も必要?
作戦期間は次の定期補給が来る1か月間・・・いや、2週間あれば回収した食料で保たせられるか。

「ああもうしかたないわね。大淀!
 6時間後に全艦娘を講堂に集合させて。作戦開始は概ね3日後を予定。
 4海域程度に索敵に優れた捜索艦隊を展開させ、主力は陽動のため各海域で月例の攻勢に出します。」

「はっ。」

敬礼して踵を返す大淀を見送り、穴だらけの作戦を埋めるべく、あたしは執務室へ足を向けるのだった。
水着のままで。

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